2019年08月24日

日韓問題の陰で蠢くトランプ政権

 韓国は8月22日に日本と韓国の間で軍事機密をやり取りする軍事情報包括保護協定GSOMIA(General Security of Military Information Agreement ジーソミア)を破棄した。アメリカの斡旋で北朝鮮に関わる軍事情報を共有するためのものだったが、一年ごとに自動更新する仕組みだったが、韓国は更新せず破棄を申し出た。韓国側の釈明は、文在寅大統領が「光復節」の演説で言葉で歩み寄りを見せたのに、日本側がそれを無視したためという。文在寅が日本批判をしなかったから、日本も誠意を見せろというニュアンスで、それが本当の理由であれば、呆れるしかない。

 GSOMIAはもともと日本と韓国との間の協定というより、アメリカが中国や北朝鮮対策のために、日本と韓国で軍事情報を共有させたいと考えたものであり、破棄するのであれば、アメリカの意向がもっとも重要である。韓国も日本も北大西洋条約機構(NATO)の加盟国ではないが、グローバル・パートナーシップとしてNATOに参加しており、西側諸国の一員として、アメリカを無視することは難しい。


 アメリカと韓国の間には、米韓同盟、つまり米韓相互防衛条約があり、有事には韓国軍は米軍の指揮下に入るのである。軍事においてはアメリカの意向が最優先ではないのか。それを日本が経済的優遇措置を廃止したという理由で、一方的に破棄するのは尋常ではないだろう。実際、韓国は協定は破棄しないとアメリカに伝えており、それを裏切ってGSOMIAを破棄を通告した韓国へ著しく不信感を募らせているという。
 
 日本が韓国への半導体素材の輸出を強化したのは7月4日だが、その前後の日本と韓国、そしてアメリカの動向を整理してみた。
 
G20大阪サミット   令和元年6月28日〜29日
米トランプ大統領訪朝  令和元年7月1日
半導体素材の規制強化  令和元年7月4日
米、韓国途上国優遇批判 令和元年7月27日
韓国をホワイト国除外  令和元年8月2日
米韓合同軍事演習    令和元年8月5日〜20日
北朝鮮弾道ミサイル   令和元年8月6日
米、台湾へF16売却  令和元年8月16日
韓国GSOMIA破棄  令和元年8月22日
 
 半導体素材の規制強化はG20大阪サミットの少し後に行われた。このタイミングで考えると、日本の規制強化はアメリカの内諾を得ていると考えられる。G20大阪サミットでトランプ大統領と安倍首相は最終確認を行ったはずであり、名目を徴用工への報復ではなく、不正流用としたことも、日本とアメリカが示し合わせていると考えられる。不正流用の情報はアメリカからの提供である可能性が高い。
 
 トランプ大統領はG20大阪サミットの後すぐに、抜き打ちで板門店を訪れ、韓国の文在寅抜きで金正恩と対談した。この後から、金正恩は韓国蔑視と思われる発言を続け、ミサイルを立て続けに発射する。8月の米韓合同軍事演習前後に何度もミサイルを発射するが、アメリカはこれに対してコメントを控えているようだ。トランプは「ただ握手して、こんにちはって言うだけ」で金正恩と会うはずはない。そこには隠された目的があるのではないか。

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 韓国は日本の政権が変わるたびに日本への謝罪を要求してきた。日本がこれを受け入れてきたのは、日本と韓国、アメリカを結ぶ安全保障上の連携が不可欠だったからだ。分かりやすく言うと、アメリカにとっての仮想敵国である中国帝国主義の膨張を防ぐためには、韓国と妥協し多少の不協和音は飲み込むしかないというのが日本側の理解ではなかったのか。アメリカもそれを望んでいたに違いない。韓国は中国と北朝鮮の喉元を押さえるための橋頭堡だったからだ。
 
 しかし韓国はここ数年、アメリカの意向を遵守しなくなっていった。もっとも大きな問題は戦域高高度防衛ミサイル(THAADミサイル、Theater High Altitude Area Defense missile)配備を文在寅が先延ばししようとしたことだろう。2017年であった。韓国経済は中国への依存度が高く、経済的には中国に喉元を締め付けられつつあった。THAAD配備に激しく反応する中国を忖度するしかなかったのであろう。しかしアメリカにとってこれは面白くない。また2015年にはマーク・リッパート駐韓大使が襲撃されるという事件が起こった。韓国はアメリカにとって、厄介な国に変わりつつあった。
 
 韓国は反日を叫んでいるが、同時に反米でもある。第二次大戦後、韓国は独立までの間、米軍の軍政下にあった。アメリカに服従したくないという気持ちは少なからずあるだろう。さらに、本音では中国も嫌いである。朝鮮半島は昔から中国の属国であり、中国には親しみよりも憎しみが強い。日本も嫌いでアメリカも嫌い、中国に憎しみを向け、独裁国家の北の同胞にのみ心を許そうとする。感情の振り子がここまで激しい国は珍しいかもしれない。
 
 アメリカは対中国への安全保障を韓国なしで構築するプランを考え始めた、というのは穿ちすぎだろうか。その手立ては少なくとも3つある。
 
1 日本の軍事力強化
2 台湾の軍事力強化
3 北朝鮮への調略
 
 日本は原則的に軍隊は持たず、専守防衛の自衛隊しかない。しかしそれを決めたのはアメリカであり、戦後70年以上を経て、1960年(昭和35年)に締結された新日米安保条約が時代遅れになりつつあることをトランプは示唆した。トランプ政権が新日米安保条約を片務的だとしたのは、日本が自前の軍隊を持ち、中国膨張の抑止力となることを期待しているからである(暗に改憲しろと述べているわけだ)。アメリカは約480兆円の国家予算で約15%の73兆円を軍事費に当てているが、日本は約100兆円で軍事費は5兆円強である。アメリカにすれば、日本は軍事費にもっと予算を割けるはずだと考えているだろう。ちなみに中国の国家予算は日本の1.7倍くらいで、軍事費は4倍程度となっている。
 
 台湾は一地域とされているが、実質的には独立国であり、中国がそれを認めないだけである。その台湾にアメリカはF-16ファイティング・ファルコンを66機も売却することになった。総額約80億ドルに及ぶという。中国への抑止力になることは間違いない。F-16は1974年に開発された少し古い戦闘機だが、輸出向けとしていまでも改良型が生産されている。さすがに台湾にF-35を売るのは刺激が強いと思ったのか、価格の安い(機体のみではF-16の価格はF-35の5分の1くらい)F-16にしたのだろう。それでもロシア戦闘機のコピーのコピーでしかない中国の戦闘機には十分太刀打ちできるはずである。
 
 もう一つは金正恩抱き込み作戦ではないか。金正恩は自己承認欲求が極めて高い。トランプはそれを知りつつ、金正恩とサシで会談することで、彼を手懐けようとしているのだ。なぜなら北朝鮮のミサイルは、韓国や日本だけでなく、北京にも届くからである。アメリカが本気になれば、金正恩を頂上作戦で抹殺するのは難しいことではない。しかしもし金正恩をアメリカのエージェントにできれば、中国にとってこれほどの脅威はない。実際に反中にならなくても、「ひょっとすると裏切るかも」と思わせるだけで絶大な効果がある。
 
 アメリカは韓国がGSOMIAを破棄したことを非難し、文在寅を名指しで批判した。アメリカのメッセージは文在寅の降板である。文在寅は側近のスキャンダルで首が繋がらなくなっており、降板はそれほど遠くないかもしれない。しかし次に選ばれた政権が文在寅と同等であれば、アメリカは韓国を見限るに違いない。日韓問題がエスカレートし、ウォンは止めどなく安くなり、韓国は国の資産を失っていく。トランプの手のひらで踊るしか道はないが、韓国はそれを選ぶことができるのだろうか。


posted by 上高地 仁 at 22:36| Comment(0) | 日韓問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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