当初、WHOはマスクの使用を推奨していなかった。マスクではウイルスの感染は防げないからだ。コロナやインフルのようなRNAウイルスを感染に防ぐには、レベル3の研究施設が必要となる。いわゆる「バイオセーフティーレベル(biosafety level)」である。レベル3は封じ込め実験室とも呼ばれる。
BSLは、感染源のリスクに合わせて設定されていて、2019新型コロナウイルスは、レベル3のウイルスに指定されている。しかしレベル3に対応するリスクグループの定義は
生死に関わる程度の重篤な病気を起こすが、有効な治療法・予防法がある
となっており、現在新型コロナウイルスの有効な治療方法はなく、リスクグループの定義に従えば、レベル4であっても不思議ではない。鳥インフルエンザやSARSコロナウイルス、MERSコロナウイルスがレベル3なので、それに準じているということだろう。ちなみにレベル4には、天然痘ウイルス、エボラウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスなどがあり、こちらは完全防護で、なおかつ実験室に入るには空気ボンベが必要になる。スティーブン・ソダーバーグ監督の映画『コンテイジョン』ではレベル4の研究室で、新型の豚とコウモリのインフルエンザの遺伝子が再集合したウイルスを扱うシーンが描かれている。
生死に関わる程度の重篤な病気を起こすが、有効な治療法・予防法がある
となっており、現在新型コロナウイルスの有効な治療方法はなく、リスクグループの定義に従えば、レベル4であっても不思議ではない。鳥インフルエンザやSARSコロナウイルス、MERSコロナウイルスがレベル3なので、それに準じているということだろう。ちなみにレベル4には、天然痘ウイルス、エボラウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスなどがあり、こちらは完全防護で、なおかつ実験室に入るには空気ボンベが必要になる。スティーブン・ソダーバーグ監督の映画『コンテイジョン』ではレベル4の研究室で、新型の豚とコウモリのインフルエンザの遺伝子が再集合したウイルスを扱うシーンが描かれている。
ヒトあるいは動物に生死に関わる程度の重篤な病気を起こし、容易にヒトからヒトへ直接・間接の感染を起こす。有効な治療法・予防法は確立されていない。多数存在する病原体の中でも毒性や感染性が最強クラスである。エボラウイルス・マールブルグウイルス・天然痘ウイルスなど。(Wikipediaより)
となっている。
完全にウイルスを封じ込めた実験室で扱わねばならないものを、マスクで防げるというのは、まずありえない。マスクが有効なのは、感染を防ぐことではなく、感染していても発症していない感染者がマスクをすることで、他の人に感染させることを防ぐことにある。この感染していても発症していないことを
不顕性感染
という。症状が顕在化しない感染者のことである。こういう人にはマスクは不可欠なのである。WHOは感染の可能性の高い人がマスクをすればいいのであって、健康で感染していない人はマスクは不要だと考えたわけである。健康な人がマスクをして、不顕性感染している人にマスクが行き渡らないことになれば、本末転倒だからである。
となっている。
完全にウイルスを封じ込めた実験室で扱わねばならないものを、マスクで防げるというのは、まずありえない。マスクが有効なのは、感染を防ぐことではなく、感染していても発症していない感染者がマスクをすることで、他の人に感染させることを防ぐことにある。この感染していても発症していないことを
不顕性感染
という。症状が顕在化しない感染者のことである。こういう人にはマスクは不可欠なのである。WHOは感染の可能性の高い人がマスクをすればいいのであって、健康で感染していない人はマスクは不要だと考えたわけである。健康な人がマスクをして、不顕性感染している人にマスクが行き渡らないことになれば、本末転倒だからである。

◆WHO、医療現場マスク不足懸念 テドロス氏、過度の使用を戒め
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020040701001792.html
一般にインフルエンザの場合、数日で発熱や悪寒、筋肉痛などの症状が現れる。症状が現れたころに、咳やくしゃみをすると、飛沫に多量のウイルスが含まれるようにる。つまり症状が顕れる前は、体内にウイルスが少なく、人に感染させるほどの量のウイルスは体内にないわけである。
通常、インフルエンザでは発症までは3日くらいなので、不顕性感染はそれほど多くはない。発症するというのは、体内の免疫機能が発動し、免疫細胞がウイルスに対して宣戦布告した合図である。インフルエンザの免疫システムの尖兵は、
マクロファージ(大食細胞)
が担っている。この免疫細胞は、白血球に一種で、とりあえず体内にある異物を食って食って食いまくる。体内でアメーバのように動き回り、細菌やウイルスだけでなく死んだ細胞の破片や体内に生じた変性物質なども捕食する。要するに掃除屋である。通常の細胞は20ミクロンくらいだが、マクロファージは25〜50ミクロン程度の大きさを持っている。

しかしマクロファージは単なる掃除屋でない。免疫機能においては、重要な役割を果たしている。マクロファージは細胞内に取り込んだウイルスがあると、それを解剖してしまうのである。そして病原性があるかどうかを調べることを任務とする。しかも遺伝子レベルでである。不思議なことに、病原性のあるウイルスには特定の遺伝子配列が含まれているのである。
そしてその特定の遺伝子配列を見つけると、特定のヘルパーT細胞を活性化させる。いわゆる抗原提示である。ヘルパーT細胞はリンパ球の一種で、特定の遺伝子配列を含んだ異物をマクロファージから受け取るのである。このときに、マクロファージからもT細胞からもサイトカインと呼ばれる物質が放出される。T細胞は、病原性のある異物を認知すると、今度はB細胞を活性化させる。B細胞は、T細胞からのシグナルによって免疫グロブリンという抗体を生み出し、病原性のある異物に対抗する。つまりここでウイルスを抗原としてターゲットオンするわけである。T細胞はB細胞だけでなく、マクロファージも活性化も促し、病原体の排除を促進する。
サイトカインは複数の物質に与えられた名称で、これらのうちで主なものとして
インターフェロン
インターロイキン6
の二つが発症の症状を生み出すといわれている。発症するには、大量のサイトカインが必要で、体内でたくさんのマクロファージがほぼ同時期に食らった異物の病原性を認知したことである。つまり、ウイルスが体内に蔓延したときなのである。ウイルスが体内に侵入して繁殖(というより増殖、細胞内での自己複製)して、初期にその繁殖を止められなかったときに発症し、インフルエンザではそれが3日程度なのである。もちろん、感染しても免疫機能が即座に機能して、インフルエンザウイルスが、マクロファージやT細胞やB細胞に排除されて発症しないことが多いわけである。インフルエンザウイルスでも、症状が軽く部分的で、高熱にならなければ、普通の風邪(感冒)とされることになる。
新型コロナウイルスがインフルエンザウイルスと異なるのは、発症するまでの期間が長いということである。武漢で流行り始めた初期の頃、潜伏期間は2週間程度と言われていた。現在では、最長で14日、中央値で5日程度と言われている。インフルエンザより極めて長いこの発症までの期間を、WHOは見逃したのだろう。僕も当初、新型コロナウイルスの胡乱さとして、ウイルスの潜伏期間の長さをあまり深く考えなかった。長い潜伏期間は、ウイルスの繁殖が遅いためなのか、免疫機能の発動が遅いことを示すのかわからなかった。
しかし、潜伏期間の長さはウイルス増殖の遅さではなく、免疫不全といってもいいくらいの免疫の遅さだった。つまり長い不顕性感染の間、症状のでない感染者はウイルスを放出し続けているわけである。これが感染を広げた理由であろう。おそらく世界の感染学者は、新型コロナウイルスで発症するまでの仕組みがわからず、鳥インフルエンザと同じように考えていたからに違いない。
新型コロナウイルスの流行を日本人は当初、対岸の火事のごとく見ていたが、感染者が日本にも現れると、いち早く予防に走った。瞬く間に国民皆マスクになった。人々はマスクの買占めに走り、企業は社員にマスクを強制・推奨した。あくまでマスクが感染予防になると考えていたからだろう。予防にはならないにしても、マスクは不顕性感染者からの感染拡大を防ぐ効果があった。日本での感染の広がりが欧米より緩やかなのは、初期の皆マスクによるところが小さくないに違いない。しかし意図したものではなく、怪我の功名であろう。
ついでに言うと、日本政府が配布している洗濯可能なマスクは、不顕性感染者が感染を広げないという観点で言うと、正解である。使い捨てマスクを長時間使うことに比べると、毎日洗濯すれば、むしろ衛生的ではないか。洗濯可能マスクを嗤う人は、新型コロナウイルスの特性を理解していない人なのである。